2016年度のまとめ

2016年度は着任3年目ということもあり,研究室活動における1つの節目になる…いやむしろ節目にすべき年だろうと,年度始めからぼんやり考えていました.果たして,その節目にふさわしい成果が得られたように思います.

まず,SIGGRAPHでのフルペーパー採択という大きな成果がありました.今思い返しても投稿準備はとても骨が折れるものでしたが,それ以上の喜びや貴重な経験,新しいご縁が採択によってもたらされました.個人的には,準備を支えてくれた家族に最高の舞台で感謝を示せたのが何よりでした.もちろん,論文の品質とライトニングトークの笑いレベルを何倍にも高めていただいた共著者にも大きな感謝です.

また,その直前にお招きいただいたComputer Animation Open Course – Rig and Tools –においても学ぶものが多く,現在にも繋がる良いご縁をいただく貴重な機会となりました.さらに,Computer Graphics Gems 2015に寄稿した「スキニング分解」の発展版を,SpringerのHandbook of Human Motionという,国際的な学術書籍に寄稿させていただく機会にも恵まれました.そしてつい先日,一昨年に情報処理学会論文誌に掲載された論文が,情報処理学会2016年度論文賞に選定されたとの通知もいただきました.これは,数百件の掲載論文の中から数編のみが選定されるという,非常に栄誉ある学術賞です.

もともと一連のリギング関連の研究テーマは,産業界での実用化されている技術に大きな刺激を受けたことに端を発しているのですが,それが国内外の学術会議で高く評価いただいたことに大きな意味を感じています.企業に勤めていた時,現場で生まれている実用技術およびニーズの中には,良い学術研究のシーズとなりえる貴重なアイデアが豊富にあると常々感じていましたが,その感覚を自分自身でも少しだけ実証できたように思います.今後も産業界のニーズを踏まえつつ,学術的にも価値の高い研究を行っていきたいと思います.さらに,この研究テーマについても学術研究の枠に留めることなく,実制作現場での利用にも耐えられるように引き続きブラッシュアップしていく必要があります.実用フェーズに移っていく今これからが本番とも言えます.解決すべき課題もまだまたま残っていますが,着実に良い技術群に仕上げていきます.

さらに,学生も交えた研究室の成果としては,昨年度に引き続き学生の対外発表が少しずつ増えてきたことも良い傾向でした.教員としては,たとえ未完成で問題点が多い成果でもよいので学生たちにはどんどん外に出て発表し,自分自身のアイデアや成果を世界に問う経験をたくさん積んでもらいたいと考えています.その場で厳しい意見をいただくのも,高い評価をいただくのも,等しく良い経験となるでしょう.学内の卒研発表会などを見る限りでは,少なくとも本研究室配属生のプレゼン技術は対外発表の水準に十分達しているので,さらに内容を練りつつ学外発表に挑んでもらいですね.

以上の通り,本年度は想定以上に良い形で終えることができたと思います.来年度も,継続テーマに加えて新しいチャレンジにも取り組みますが,着実かつ丁寧に,より高品質な教育研究を実現できるよう努力します.