I3D終了後の夕方にはサンフランシスコのダウンタウンに移動し,その翌日からGame Developers Conference 2015に参加しました.日程の都合上,前半のチュートリアル&サミット&ブートキャンプにのみ参加し,後半のメイン会議日程は欠席しています.
私は今回がGDC初参加なのですが,サンフランシスコのど真ん中と立地は最高で,かつ巨大な会場で開催されていました.会議棟が徒歩2分くらい離れている場合もあり,10分の休憩時間中に急いで移動することもありました.もし雨だったら面倒くさくて別棟には移動しなかったでしょう..また,参加費もすごく高いです.同じような会議日程のSIGGRAPHの参加費の1.x~2倍弱します.プロの開発者向けの会議=会社払いを見越した価格設定なのでしょうか.ただ,休憩時間にコーヒーが振る舞われたのは良かったです.
以下,備考録です.
- Fast and Funky 1D Nonlinear Transformations (Math for Game Programmers)
- パラメトリック関数の本体そのものを改変するのではなく,パラメータ変数のほうを操作するだけでも面白いよ,という講演でした.さらに,パラメータの操作を高速に近似するアルゴリズムも紹介されています.なお,発表者がインスパイアされた講演の一つとして,Juice it or lose it (YouTube)が紹介されています.会場の多くの開発者も視聴済みだったそうです.私も公演後にさっそくチェックしましたが,わかりやすくて面白いです.最後はやり過ぎのジョークとしか思えませんが.
- Mixing Geodetic, Hand-crafted and Procedural Geometry (Math for Game Programmers)
- 講演者が陰関数曲面に注目しているので,ポリゴンメッシュモデルを陰関数表現に変換する方法を考えましたという講演でした.私は詳しくありませんが,すでに学術分野でも広く研究されているテーマのような…?おそらく,一般の開発者にも理解できるようにかみ砕いて説明されているのでしょう.
- Inverse Kinematics Revisited (Math for Game Programmers)
- Dual Quaternionを使ったインバースキネマティクスのお話.イマイチ話がよくわからないと思ったら,昨年の講演のフォローアップに近い内容だったようですね.さらに,講演後に昨年の講演資料を見直しても,どこが違うのかイマイチ掴めず.CEDECでのフルボディIKの講演を英訳される方が数倍わかりやすいと思いました.
- Missing Link – Technical Designers in Animation (Animation Bootcamp)
- Technical Designer (日本だとテクニカルアーティスト,TA)のお話.アニメーションと題していますが,一般的なテクニカルアーティストのお話だったと思います.TDiA(Technical Designer in Animation)のお仕事は,アニメーターと(ゲーム)デザイナーとエンジニアをつないで,クリエイティビティを高め,コストを削減し,常に先を見据えた開発を行うこと,とまとめられています.アーティストもエンジニアも職能が先鋭化されているだけに,幅広い知識とコミュニケーション能力を兼ね備えた,オールラウンダーが求められるようです.
- Understanding Homogeneous Coordinate (Math for Game Programmers)
- 同次座標系の素晴らしさを再認識しましょうという講演.3Dベクトルを表す際にw成分を加えた4Dベクトルを扱うのは,どういう意味があるのか,具体的にはどのように使い分けるべきなのか,そしてどのような応用があるのかと,非常にわかりやすく講演されていました.同次座標系の素晴らしさ,私も再認識しました.
- Running the Halo Multiplayer Experience at 60fps: A Technical Art Perspective
- Xbox One版のHaloを60fpsで動作させるうえでの苦労話.毎日毎日,地道なプロファイリングが重要だったというお話でした.Bungieからの講演同様,コミュニケーションが非常に重要なスキルであることが述べられていました.アーティストとエンジニアをつなぐのは幅広い知識や経験のみならず,高い対人スキルの高さも求められるようです.そういう意味では,テクニカルアーティストは,ディレクターやマネージャー寄りのキャリアも描けそうな職種であると感じました.
- Proceduralism and Automation at Certain Affinity
- 上の講演と同じく,Haloの開発におけるプロシージャル技術の応用に関する講演.会社独自の技術紹介を期待していたのですが,実際にはHoudiniの利用事例紹介が多数でした.アーティストフレンドリーなワークフローについては,一般的な自動化のアプローチを踏まえつつ,Certain Affinity社の個性も見られました.
たった2日間の参加でしたが,なかなか得られない機会だったので参加してよかったです.ただ今後,私自身がGDC単体に参加するメリットがあるかといえば,少し悩ましいです.最先端の研究ネタを探すという意味では得るものは少ないでしょうし,GDCの講演を聴くだけで現場の仕事内容や苦労がわかるかといえば,おそらくNOだと思います.というのも,GDCに集う開発者は現場の苦労や課題は共通認識として持っており,そのうえで各社の工夫や試行について情報共有する場だと理解しているからです.来年もI3Dと併催されるとしても,参加費もろもろを考えると,大学人の業務として参加するのはちょっと違うかなという印象を持ちました.制作秘話やプログラミングのトリックなど,講演自体は面白いんですけどね.